ポイント
- 出血傾向(止血機能異常)が疑われる患者には、スクリーニング検査として血小板数・プロトロンビン時間(PT)・活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)・フィブリノゲン量・フィブリン分解産物(FDP・D-dimer)を実施する。これらの検査結果によって、止血機構のどこに異常があるかを判断し、疑われる疾患の確定診断に必要な検査を実施する(図1)。
- 明確な出血症状がありながらスクリーニング検査が全て正常の場合には、血小板機能異常、凝固第XIII因子活性の低下、von Willebrand因子活性の低下、または血管の異常が考えられる。
- 血小板の量的・質的異常による出血症状には、血小板輸血がおおむね有効であるが、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)においては、微小血管における血栓形成をさらに増悪させるために禁忌である。
- 凝固因子欠乏による出血症状に対しては、凝固因子濃縮製剤がある場合は、その製剤によって治療を行い、ない場合は新鮮凍結血漿(FFP)による凝固因子全体の補充を行う。ただし、凝固を阻害する物質(凝固インヒビター)が存在する場合は、凝固因子を補充しても凝固時間は短縮しない。
1診断
出血傾向が疑われる患者には、スクリーニング検査として血小板数・プロトロンビン時間(PT)・活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)・フィブリノゲン量・フィブリン分解産物(FDP・D-dimer)を実施する。これらの検査結果によって、止血機構のどこに異常があるかを判断し、疑われる疾患の確定診断に必要な検査を実施する(図1)。
PTまたは、APTTが延長している場合、交差混合試験(クロスミキシング試験)を実施すれば、その原因が凝固因子の単純な欠乏によるものか、凝固阻害物質(特定の凝固因子のインヒビターやループスアンチコアグラント)によるものかが鑑別できる。(図2)
明確な出血症状がありながらスクリーニング検査が正常の場合は、血小板機能異常症、凝固第XIII因子(FXIII)低下症、von Willebrand病、または血管の異常が考えられる。この中でvon Willebrand病は比較的頻度が高いため、スクリーニング検査が全て正常の場合には、一度von Willebrand因子活性(リストセチンコファクター活性:VWF:RCo)を測定しておく必要がある。また、大量出血後にはしばしば消費性にFXIIIが低下し、出血が遷延する場合があるので、適時測定が必要である。
2治療
血小板の量的・質的異常による出血症状には、血小板輸血がおおむね有効であるが、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)においては、微小血管における血栓形成をさらに増悪させるために禁忌である。免疫性血小板減少症(ITP)では、血小板輸血の効果は少ないが、重篤な出血の止血治療のために、γグロブリンやステロイド剤を併用の上で実施する場合がある。
凝固因子欠乏による出血症状に対しては、凝固因子濃縮製剤がある場合は、その製剤によって治療を行い、ない場合は新鮮凍結血漿(FFP)による凝固因子全体の補充を行う。検査上凝固因子の欠乏が示唆されるが、これらの補充療法が無効な場合は、凝固インヒビターの存在を疑って精査を行う必要がある。
一部の出血においては、血管造影により破綻血管を同定し、その血管に塞栓術を施行することで、止血が可能となる場合もある。出血部位の局所的治療として、トロンビン製剤、ゼラチン製剤、フィブリン接着剤、血管収縮剤などの外用剤が用いられる場合もある。
その他、皮下出血や粘膜出血あるいは筋肉内出血や関節内出血の予防、治療には原因疾患の治療に加えて、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、ビタミンCなどの血管増強剤、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸などの抗線溶剤が用いられる。抗線溶薬は粘膜出血に比較的有効であるが、尿路出血に対する使用は、尿中で形成された凝血塊が溶解しにくくなり、尿路閉塞をきたす可能性があるため禁忌となる。また、播種性血管内凝固症候群(DIC)等の二次線溶亢進状態に対する使用も、血栓傾向をさらに増悪させるために禁忌となる。